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 見上げるゼロGドームは、ボタン一つで無重力空間になり、試合の時は様々な障害物をそこに設置する。  高さ40メートル、直径30メートルの円形ドーム内には、ポイントの描かれた、人の頭ぐらいの大きさのグラフィックがいくつも浮かび上がり、それに少しでも手が触れれば熱と指紋を感知して、その点数が自分の得点として入る。  点数の高いグラフィックほど難易度の高い場所に浮かんでいて、それを選手たちが様々な方法で奪い合うのだ。  ルールは15分3セットで、相手に怪我をさせなければ何をしてもいいという単純なものだ。だけどセット間でグラフィックと障害物の位置は変わり、その都度戦略も立て直さなければならなくなる。  団体戦となるとメンバーの使い方も戦術要素に入り、さらに得点パターンは増える。案外頭も使うスポーツだ。  身体に負担のかかるゼロG公式戦の参加を、降下隊には本当は許可されていないのだけれど、状況判断訓練と称し、おじいちゃんはよくドームを貸し切って、降下隊員たちとポイント合戦をする。  地球降下隊は、各班10人構成の、3班体制で成っている。年に3回行われる地球降下のために、メンバーは日頃からスペースシップやスクーター操縦などの任務訓練、そして厳しい身体トレーニングをこなしていた。  地球の重力の3分の一しかない月ステーションでは、筋力がすぐに低下してしまう。それを防ぐために、降下隊メンバーは部署に関係なく、筋肉トレーニングを毎日欠かさない。おじいちゃんが原始的と言う訓練器具がたくさんあるトレーニングルームで、汗が枯渇するんじゃないかと思うほど、身体を鍛え上げている。  1つの班には、班リーダーが1人、その下に各部長が束ねる、技術部、作業部、医療部がある。  ちなみに一班のリーダーはおじいちゃんで、はっきりと決められたわけではないけど、降下隊の総隊長みたいな存在になっている。  おじいちゃんは誰にとっても、頼りになる存在なのだ。
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