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「アシル、負けてるわよ。残念ね」  ドーム内では、おじいちゃんとアシルがワンONワンをしていた。スコアボードを見ると、2セット目開始5分ですでに2000対630と、大差がついている。  ポイントグラフィックは100点が5個、50点が50個、10点が200個、計5000点分存在する。取られていない残りのポイントを計算すると、2370点。全体の半分の時間も経っていないのに、ポイントが半分以上なくなっているのは、ハイスコアゲームだ。  1週間前に引退する作業部長から役目を引き継いだばかりの三班のアシルと私は、付き合って1年になる。金髪の細い髪がとても綺麗な人だ。  私にはとても優しいのだけれど、なぜかおじいちゃんとはよく言い争いになり、私は二人の間でいつもヒヤヒヤする嵌めになる。  おじいちゃんはその言い合いを楽しんでいるみたいだけど、アシルはおじいちゃんのそういうところに、余計苛々するみたいだった。  ドームの中で飛びまわっている二人の姿は、そんないつもの二人を象徴するかのようだった。おじいちゃんは楽しそうにプレイしていて、アシルは苛々しながら、粗雑なプレイを繰り返してしまっている。  相手がおじいちゃんじゃなければ目を見張るようなプレイをするのに、なぜかアシルは、おじいちゃんの前では実力が出せなくなる。  ポイントが全てなくなるとそこで試合終了だけど、そんなことはごく稀で、私は一度もそんなゲームを見たことがない。  だってポイントグラフィックは40メートルもあるドームの天井付近にまで散らばっているのだ。いくら無重力でも、そんなところまでいくのは難しい。  それらを全て奪うなんて、神技だ。  そんなことを考えていたら、おじいちゃんがドーム天井にあった100点のグラフィックを、床からランダムに飛び出す鉄棒を利用して飛び上がり、伸ばした右手で奪い取った。 「ワンハンドレッド」という無機質な声が流れる。  くるぅんと天井で一回転して、ぽぉんぽぉんと、おじいちゃんは地上まで降りてきた。
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