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「被害者の名前は、サキ・ペインズ。ネバタ州ラスベガス在住の22歳、女性・・・」
若い捜査員が、原稿を読み上げる。
「ペインズ(Pain:痛み)なんて、皮肉な名前だなぁ。おい」
報告を危機ながら、ジェファーソン刑事が、小言を漏らす。
「シッ!声が大きいですよ。まだ報告が終わってません」
隣のサバス捜査官が注意した。
「大丈夫だよ。こんな後ろの席の小言が聞こえるかよ」
ベテランのジェファーソン刑事と新人のサバス捜査官は、広い会議室の末席。
「そうですけど、もっと仕事にやる気だしてくださいよ」
サバス捜査官は、カレッジを卒業して半年の新人も新人の下っ端。一方、ジェファーソン刑事は、警官になって30年になる52歳の大ベテラン。
「検死報告書によると、死因は腹部の切断による失血死。その他、外傷として口角から耳まで頬を大きな裂傷、全身には、66箇所にも及ぶ刺し傷、顔面右側には殴打による腫れ、右乳房は乳首を中心に皮膚が切り取られ・・・」
検死報告書には、人間が考えうるすべての残虐行為が羅列されていた。
「ひでぇことするな・・・」
ペインズ刑事はタバコをふかした。
「メキシコ・カルテルだな」
捜査本部の責任者、ダグラス警部が呟いた。全員が、彼の方を向いた。
「彼らの暴力性は、我々アメリカ人の想像を超える。この事件の死体も、そうだ。アメリカ人の犯行ではないな」
ダグラスの言葉に、ジェファーソン以外の全員が頷いた。
「相変わらず、短絡的な考えだな」
加えて、被害女性がネバタ州ラスベガスのストリップパーであること、麻薬の常習者であること・・・などなど、彼女と闇社会との繋がりを示す情報がどんどん報告されたのもあり、
「犯行は、メキシコカルテルだ。全員、カルテルを洗え」
捜査方針はさほどもめることなく決まった。次に、担当が指名されている。
「ラスベガスのストリップクラブの捜査は、ランドルフ。麻薬カルテルの捜査は、ドルトンと・・・サバス」
「こんな、新米が、そんなビッグな任務を?」
大抜擢だった。
「期待しているぞ!」
ダグラスが微笑んだ。
「はい!頑張ります!」
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