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仕事熱心な若手医師
「ドクターダグ。ちょっとお時間よろしいでしょうか?」
若いドクターが声をかけたのは、老人の医者。
「また君かぁ」
老人の方は、少しうんざりしたような声で答える。若いドクターの名前は、ジョージ・マクレーン。30歳の若手医師だ。一方、老人の方は御年64歳のベテラン医師。名前は、ダグ・バーランド。
「はい。やはり、先日の検死報告について、納得できないところがいくつかありまして」
「君も助手として執刀にかかわったじゃないか」
「そうなんですが、やはり、調査しきれていないところがあると思うのです」
「もう一度、やり直せというのかい?」
「私は、そうするべきだと思います」
「ああ、面倒なことはしたくないんだ。仕事は増やさないでくれ」
そういうと、ダグはジョージの言葉を遮り、そそくさと歩いていった。
「はぁ」
ジョージはため息を着いた。
「やめとけやめとけ、無駄だよ」
二人の会話を見かねて、同僚の医師がジョージの肩をたたく。
「あのじいさんに何言っても無駄だよ。もう、いつ隠居するかしか考えてない唯のじいさんだ。若くて、やる気のあるお前の話なんて聞く耳もたないよ」
「ああ、分かってるけど・・・」
ジョージは、検視報告書を握りしめて、その場を去っていった。
去っていく、彼の後姿を見て、同僚が呟く。
「まぁ、お前の態度にも問題あるけどな」
自分のデスクに戻り、ジョージは検視報告書を読み返す。もう、何度も読み返しているが、いつも同じページで手が止まる。
黒いダリアのタトゥーが映し出されたページ。
かすり傷一つなく、美しいタトゥー。
「なぜ、これほど綺麗なままなのだろう」
「先生。外来の時間です」
看護師が、デスクに入ってきた。
「ああ、すいません」
「少し遅刻が多すぎますよ」
「すいません」
看護師がドアを閉めた。
ジョージは、写真のタトクーを指でなぞる。まるで、彼女の肌を愛撫するように・・・
「今夜・・・」
彼は、そう呟き、検視報告書を閉じた。
その頃。
「すいません。ドクターダグはいませんか?」
病院の入口に、サキ・ペインズの検視報告書をもったジェファーソンが、姿を見せた。
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