仕事熱心な若手医師

3/4
前へ
/23ページ
次へ
音の発信源に振りむく。 ガシャン! 「だれかいるんですか?」 大量の冷や汗が溢れ出る。 (バレたら終わりだ) 「誰かいるんですか?」 もう一度、問いかける。 暗闇から、現れたのは黒猫。 「なんだ・・・」 ジョージが一息つく。 (あの赤子の泣き声も、猫の鳴き声を聞き間違えただけか) 猫はまっすぐに、ジョージに近づき、鋭くきれいな瞳で、ジョージをまっすぐに見つめる。 「一体どこから忍び込んだんだ?」 この地下の冷暗室は、もちろん最低限必要なセキュリティは完備されていて、小動物とはいえそう簡単に忍び込めるものではない。黒猫は、ジョージの足元にすりより、顔を擦りつけた。毛並みが艶やかで、美しい黒猫だ。 「野良ネコじゃない?誰か患者の猫だろうか?」 彼は、黒猫をゆっくりと抱き上げ、猫を撫でる。猫は、撫でられても、鳴き声も上げず、じっとジョージを見つめたままだ。 ジョージは撫でる手を止め、猫の瞳を見つめ返す。 猫の住んだ瞳は、虹彩の色をはっきりと映し出している。 「綺麗だ。君も彼女と同じくらい綺麗だ」 突然。ジョージは、その唇を黒猫に近づける。 「イタッ!」     
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加