第一章 絶望から希望

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 馬鹿馬鹿しくて鼻で笑う。母と同じことを言っている。ならば守るもなにもないんだろう。あの場に兄がいたとして、兄は母と同じように弘子さんをなじるんだろう。  兄と話していても胸糞が悪いだけ。振りきるように横を通りすぎると自室に入った。  結さんとのデートはとても楽しかった。穏やかで、時間がゆったりとそれでいて終わってみればあっという間に思えた。  その気持ちをいつまでも持っていたかったのに。ここに帰ってくれば一瞬で心が乱される。  でき損ない。そう耳元で延々と言い聞かせられているような。  なぜ俺は、できないのだろう。  なぜ兄と同じ遺伝子を受け継いでいるはずなのに。なぜ自分は違うのだろう。  もう、そんなことどうでもいいはずなのに。
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