第三章 縮まらない距離

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「ーーーんっ」  ビクッと震える体。吐き出した欲望で掌を汚す。長い息を吐き出せば、小さな罪悪感がポツリと生まれた。  結さんへの気持ちを自覚してからと言うもの、これまでのように女を抱く気になれず、もっぱら自家発電に勤しむ日々。それも、妄想ネタはもちろんといっていいのか、結さんのあられもない姿。もちろん想像だ。 「むなしい・・・むなしすぎる」  片想いなのだから、仕方ないことだ。しかも相手は男。男同士のセックスっていったいどうなんだ。気持ちいいのかな。  結さんと時任さんのあの声を聞いたあと、本屋でBL本を買ってみた。それを読んで男同士のセックスの方法を知った。衝撃的だった。本来出す場所である尻を使うセックスは、衝撃でなにもいれていないのに尻の辺りがモゾモゾする。  でも、その本でも入れられた方の男はとても気持ち良さそうに喘いでいた。もちろんフィクションであることは承知の上だが、あの時の結さんの声も、とても気持ち良さそうなものだった。  結さんを喘がせたい。俺の手で喘いでほしい。結さんに触れたい。  その思いは日に日に募るばかりで、どうにか抑えないとと思うのだけどその方法がわからないまま今日もまた自家発電に励んだのだった。
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