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子どものような純粋さで手にしたおもちゃを振り回している。そんなイオリの調子にケントはめまいがしそうだった。
「しかし、君という存在が管理局に入ってこの家に来たこと、レイが僕の予想よりもずいぶん早い段階で家に君を招き入れたことだけは誤算だった」
誤算という言葉の割には、弾むような声でイオリが言った。
「僕は、本当にすべてをレイに託していたんだ。遺したデータも、レイ自身もどうするのかを含めて。誰が訪れたとしても、レイが入れたいと思わなければ、この家の扉は開かないようになっている。でも、レイは君を選んだ。どうしてだろう……君とレイが兄弟みたいなものだからかな?」
「兄弟……」
「そう。僕は君の腕や臓器を作り、その技術はレイに引き継がれている。仲間意識でもあったのかと思ったけど、そのあたりは僕にも読み取れないんだ」
目の前に姿勢よく立ったイオリはにっこりと笑った。わざとらしい笑顔では、本当のことを言っているのかわからない。食えない人だ。ケントはイオリから本音を引き出すことをとっくに諦めていた。
「でも、君という人間と関わることで、レイは急速に、思いもよらない成長を遂げた。僕の予想を裏切るなんて、最後の実験は大成功と言って良いのだろうね!」
ケントは虚を突かれた。
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