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少しずつ俺を知ってくれればいいから、式場のキャンセルだけはストップさせて。もし、俺と結婚する気になれなかったら、キャンセル料は俺が払うから。
そういった水野さんの言葉に甘えるように、私は蓮にLINEを送った。
キャンセルはしないで、と。
蓮の気持ちが変わるかもしれないという期待もあった。
LINEはブロックされてるかな、と思ったけど、すぐに既読がついて、『わかった』と一言だけ返事が来た。
そのことだけでも、私は救われた気がした。
蓮と私は、就活のときに出会った。
お互いに目指している業界が同じだったらしく、何度もいろんな会社で顔を合わせるうち、いつしか言葉をかわして、連絡先を交換するようになった。
結果として、入社した企業は別れてしまったけど、お互いに内定が取れたお祝いに二人で飲みに行くことになって、そこで蓮に告白された。
蓮はいつでも穏やかで優しくて、大好きだった。
そろそろ結婚しようと言い出したのも、蓮からだった。
でも、互いの両親に挨拶に行って、少しずつ準備を進めていく間に、蓮の出張が増えた。
今思うと、出張というのは口実で、もう一人の彼女と会っていたのかもしれない。
蓮が嘘なんてつけるわけ無い。
疑いたくない気持ちは大きかったけど、結果として私は振られて、蓮が女の子と仲良く歩いていたと水野さんは言っている。
たとえ水野さんの話が嘘でも、私が婚約破棄されたことには間違いない。
蓮と話した金曜の夜、私は水野さんに誘われるままバーで飲んで、タクシーを呼んでひとり暮らしの家に帰った。
土日で、浮腫んでいるだろう顔を治さなくては、と半身浴とリンパマッサージをして、パックもした。
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