5 別れの時

4/4
前へ
/81ページ
次へ
「じゃあ、蓮にしよう」 「生まれたら、蓮にも見せに行かないとな」 「きっと、喜んでくれるね」 それから数日後、私は無事男の子を出産した。 蓮の生まれ変わりだとは思ってない。 だって、次の世で、私と蓮はきっとまた出会って、恋に落ちるんだから。 入院している僅かな期間、武士さんは毎日仕事終わりにレンの顔を見に来ていた。 指を掴んだと言っては喜んで、あくびをすれば可愛いとまた喜んだ。 退院して家に帰ってからも、何枚も写真を撮り、毎日残業することもなく、飲み会も断ってまっすぐ家に帰ってくる。 お風呂にも入れたがるし、おむつの交換も嫌な顔一つせずにやってくれて、私としてはありがたい限りだ。 本当にいい旦那様だと思う。 私が出産して間もなく、由香も結婚した。 出会ってから1年のスピード婚だったけど、幸せらしく、毎日のように惚気の連絡が来る。 式で見た旦那さんは、見るからに由香にメロメロで、私も安心している。 私も由香も、きっとこの先夫婦喧嘩をすることもあるだろうけど、ちゃんと乗り越えられるだろう。 蓮の手帳は、武士さんにも見せることなく、大切にドレッサーの引出しに保管してある。 たまに、読み返して泣いてしまうこともあるけど、そんな時は、何か感じるのかレンが泣きだして、私を現実の世界に引っ張り戻してくれる。 蓮。 蓮と出会えて、私も幸せだった。 二人で過ごした日々は、今も色鮮やかに心に残ってる。 あなたが望んでくれたように、幸せになるから。 だから、いつかまた会えたら、また私と付き合ってください。 心からの愛を込めて。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

675人が本棚に入れています
本棚に追加