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「言わんこっちゃない」
開口一番、白夜はそう言った。
冷たいというよりも、特に何の感想も無いといった無機的な口調で。
「何を考えようが他人には関係ないと言った挙句、この体たらくか」
「……」
誰のせいだと思っているの、なんて、こんなのはただの八つ当たりでしかない。
そう、悪いのは全部自分自身。馬から落ちそうになったのも、周りの人々に迷惑を掛けたのも。白夜には咎も責任もない。
「…大丈夫よ。お父様もお姉さま方も、貴方を責めたりしないわ。不安なら私からも言っておいてあげる。貴方の仕事ぶりに問題は無かったってね」
可愛げのない捻じれた言い方だというのは解っていた。
綾お姉さまなら、きっとこんな物言いは前後不覚になったってしない。
屈折した私の言葉に彼は気分を害した態度を見せたが、何も言葉を返さないままやがて溜息をついた。
そうやって呆れたような、憐れんだような眼を向けられたくなくて、私は彼から顔を背けるように踵を返した。
「もう休むわ、お休みなさい」
私は振り返らなかった。
そして、そんな私を呼び止める声も、聞こえてはこなかった。
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