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整形外科では、痛みの原因の検索をして、リハビリをしていたけれど、
永和にとってのメリットは、全くと言っても無かった。
病棟にあがると、新しいデザインの個人用の車椅子を貸し出されて、
あくまでも看護師の監視の元でだけ、車椅子に乗ることが出来た。
でも、人前では車椅子で過ごしたい永和。
歩く能力を失いたく無い永和。
相反する気持ちの中で、苦しんでいた。
整形外科の八代や神経内科の狭川聖玲愛(さがわせれあ)が行なった、検査の結果には異常が全く無いという結論になった。
永和は、足の裏が痛いからと、足の甲を床に付いて歩く。
動物としてはおかしな動きであるし、ふくらはぎや太ももの動きに痛みがあるとは言うけれど、薬が必要な痛みでは無いらしい。
それならと、精神科の松野友紀(まつのゆき)とも相談して、八坂たちは永和の精神科への転科を決めていた。
どの検査を受けても、全く異常が無いと、看護師や家族が立ち会いのもとで八代が伝えると、いきなり永和が立ち上がり、横蹴り。
「やっぱり、予想以上に力があるね。歩けるよ。頑張らない?」
という、八坂の言葉に対して、「ふん!」とだけ言い残して部屋を後にすると、
後から、小柄な男性看護師が、車椅子を押してくる。
「無いと、いざという時に困るでしょう。」
入院して初めて感じた温もりであった。
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