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白く滑らかな肌は、手のひらに吸いつくように心地良く、成井田は夢中で撫でまわした。Tシャツをたくし上げると、薄い色の突起が現れて、それを当然のように舐める。
すると、白い肌の持ち主が、プルッと震えて吐息混じりに掠れた声で笑った。
「俺、胸なんてないよ……」
顔を真っ赤にして口元を抑えているさつきと目が合って、成井田は股間に一気に血が集まるのを感じた。
「好き、です。好きだから……先輩」
暴発しそうな欲望を発散したい。その為の免罪符のように、成井田は告白していた。
卑怯だ、こんなの。最低だ。
正気の自分がそう思ったが、なぜか止められない。
しかし、獣のようになっている自分の肩を、後ろから不意に叩かれて、驚いて身体を起こす。
「ほら、イケるっしょ? ショートカット女子だと思えば」
何かの授業の時にたまたま近くに座った名前も知らない男が、成井田の肩を掴んで親しげに揺らしていた。
違う、俺は、先輩をそんな目では。
「やめ、」
肩に置かれた手を払おうとした所でブツリと映像は途切れて、成井田は飛び起きた。
掛布団が床に落ちていたが、額や首筋に不快な程汗をかいている。
「なんて夢見てんだ……」
生白い肌の感触が残る手のひらで、頭を抱えた。いくら中性的な顔立ちだからといって、そんな対象として見るなど自分が信じられない。罪悪感から、成井田は青ざめていた。
「……最低だ」
腿の間には痛いくらい張り詰めたものが、布を押し上げていた。
自分の中の汚れた気持ちを振り払えるまでは、さつきに近づくことは出来ない。
成井田は、その日を境にさつきを避けるようになっていった。
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