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「誰もクリスマスなんてやろうって言いませんからね。一度はやってみたかったんです」
薬師から意外な本音も漏れる。
「そ、そうなのか?」
だから一生は、本当かという顔で訊き返した。今まで、やろうという話が出たことさえない。
「そうですよ。ここはお寺ですからね。やる機会がなかったんですよ。それに礼門は平安の人で、しかも口煩い。クリスマスなんてやる必要はないって態度ですし」
「ああ」
それは簡単に想像できると、二人は力強く頷いていた。礼門がノリノリでクリスマスをやっていたら、それはそれで怖い。
「でも、晩御飯がクリスマスなら文句の言い様はないでしょう。二人は頑張って参加者を集めてください」
薬師の言葉に
「解りました」
「合点承知!」
侑平と一生はそれぞれ頷いた。それにしても、合点承知って、久々に聞いたなと侑平は思う。
「で、誰から行く?」
台所を出ると、早速次のターゲットを決めようと一生が燃える。
「そりゃあ」
簡単なのはあの人でしょと、二人はテレビのある居間に向かった。すると目的の弥勒と、なんと礼門の奥方の琴の君がいた。どうやら年末は休業しているらしい。最近はちょくちょく礼門のところに来ている。
「あら、お久しぶりです」
「は、はい」
琴の君に笑い掛けられ、侑平はどぎまぎする。やはり美人だ。だが残念なことに、弥勒と同じ腐女子でもある。
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