幸せの届け方

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「本当になんで、こんなことになっちゃんたんだろう……」  自分のスマートフォンに保存されている画像欄を眺めていたら、そんな濡れたつぶやきが零れた。写真の中の二人は今とは想像できないほど愛に溢れていて、喜びに満ちていて、幸福という名の温度がそこにあって、それだけで彼を嫌いになれない自分が本当に嫌になる。  今すぐ駆けだして、彼の家へと向かえない自分に腹が立つ。何もしないで待つだけ。結局私は幸せを与えられるばかりで、自分から与える努力も、繋ぎとめる足掻きも何もしていない。  きっと今、ショーウィンドウに写る自分を見てしまったらどれだけの惨めさに駆り立てられるだろう。  十二月二十四日の夜、恋人たちで溢れるこの場所で、一人泣きながら蹲るだけの自分。これ以上に滑稽な人間なんて、きっと私の人生の中では私しかいない。  もう全部諦めてしまおう。今流れている曲が終わったら、家に帰って、部屋のベッドで馬鹿みたいに泣いて、それでおしまい。  そう思って、流れている曲を自分の中でお気に入りの失恋ソングに切り替えた時、白い粒が画面に落ちて滴に変わった。 「あぁ……雪か」  近くのカップルから「ホワイトクリスマスだね」何て歓声が漏れ出てくる。正確にはホワイトクリスマスじゃなくて、ホワイトクリスマスイブでしょ、なんて言葉はきっと口に出してしまうと、自分を余計惨めにするだけから心にそっとしまう。  ようやく景色に変化をもたらした存在は他のカップルにしてみればロマンを増長させるこれ以上ないアイテムなのだろうけど、私にとっては厄災でしかない。電車のダイヤは乱れるだろうし、待ちぼうけして低下している自分の体温を奪うばかりで何も与えてくれなんかしない。  きっとこれ以上ここで待っても、彼は来ない。ただ自分の帰りがどんどんと遅くなるだけで、何も変わらない。  そう思ったら腰を上げるのは思った以上に簡単だった。
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