2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほんとに問題ないですよ。蛇さんだって、出来ないことに身体を張ったりしません」
「……お前と蛇って、どういう関係なんだかよくわかんねぇな」
思ったことをそのまま口に出してみた。
隣り合う倉庫のあいだを伸びる小道を足早に渡っていく。
「ぼくもよくわかりません。たまたま出会っただけです」
「どこで?」
「そういうジョージさんこそ、あっくんとはどこで知り合ったんですか」
みごとに、質問は質問で帰って来た。
あまりに流れるように話の軌道を逸らされて、思わず鼻で笑ってしまう。それ以上の追及もかわされるんだろうな。
道を渡って、生垣の脇を抜けていく。
「人からの紹介だ。特になんのドラマもない、ただの紹介」
蛇の言っていた通りこちらの四棟に人の気配はない。岸壁に打ち寄せる波の音が聞こえて来る。
「紹介ってどんな感じなんですか。もうちょっとくわしく聞きたいです」
予想外にハルが食いついて来た。
潮風が黒髪を揺らしている。
「えーっと、俺は梶さんに世話になるまえは、ちがう仲介者に仕事をもらってたんだ。バーのマスターだったが、いまは店もないし本人もどっかに消えてるけどな。どうしても人手が必要な仕事があって、俺が声をかけてもまったく人が集まらなかった。みかねたマスターが紹介してくれたの明石だった」
最初のコメントを投稿しよう!