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目標倉庫と、その手前の倉庫のあいだには百メートルほどの距離が空いていた。巡回の姿が遠くに見える。俺たちは身体を低くして、手前倉庫の影に潜んだ。
「ぼくが蛇さんと出会ったのは、梶さんと東北地方のある街で仕事をしたときです」
錆びの浮いたドラム缶の影に隠れると、ハルが唐突にそんなことを言い出した。
「その街は蛇さんの拠点でした。目標が被ってしまったのをきっかけに目を付けられてしまい、いまにいたります」
「いまに至るまでが気になるから、もうちょっと詳しく」
となりにしゃがみこんだハルは膝をかかえながら、ちょっと考える間があった。
「うーん。結局、目標は蛇さんに奪われて、ぼくたちは撤退するんですけど。軽蔑したくなるぐらいの執念で追いかけて来て、居場所を突き止められてしまいました。気づいたらうちで夕ご飯を食べていました」
「詳しく聞いてもよくわからんかったわ」
「そうなんですよ。あの人は道理をすっぽがすことが得意なので説明が大変」
細部を省いているとはいえ、蛇もそうだが、ハルもなかなかな気もする。淡々と、なんでもないことのように語っているが、仕事で対立した人間に居場所を突き止められて押しかけられるなんて、死を意味している。
「けど、教えてくれるとは思わなかった」
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