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スチール製の棚が並んでいる。俺の背よりも高い棚が横に三つ、あいだに通路を挟んで置かれていた。段ボールやファイルなどが雑多に置かれ、積もった埃が忘れ去られた長さを物語っている。天板のあいだから奥を伺うことが出来た。棚は奥に向かってさらに並んでいて、 上階へむかう階段がその先に見える。 「物置か。見晴らしがよくないな」 窓は板で塞がれていて、蛍光灯の明かりだけが頼りだった。壁際には積み上げられた荷物や、デスクやロッカーが放り投げたように転がっている。電灯の届かない物陰が多い。 態勢を低くして、棚の荷物の影に身をひそめる。 棚の間を抜ける通路に積もった埃に複数の足跡がついている。それは奥の階段へと続いていた。 「あっくんはこの上の階です」 通路を挟んで隣の棚に身を隠したハルは、おもむろに置いてある瓶を手に取った。ラベルは変色して剥がれかけているが、ちゃぽんと液体の音がする。 ハルは通路の奥にむかって瓶を転がした。 瓶のまわりに火花が散った。貫くような銃声が響き渡る。三度目の音に身を竦めていると瓶が砕け散った。大小のガラスに砕けて中の液体が飛び散る。 だれかいる。 俺は棚の影から銃を構えて、顔をのぞかせる。通路の真ん中に割れた瓶。左右の棚、部屋の奥、視線を飛ばす。 視界の端を掠めるように影が動いた気がした。 空気の動きを感じた気がして振り返る。     
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