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有無を言わさぬ梶さんに、ハルはそれでも嬉しそうに「うふふ」と笑っている。 最前線は警戒態勢継続中にも関わらず、少年の顔には笑顔が浮かんでいる。 「先輩にバレちゃったんだよね。さっき帰って来た」 梶さんの言葉に、ハルの笑顔が一瞬で消えうせた。目を丸くして愕然とした表情が強張っている。冷たい手に心臓を掴まれたような、一時呼吸すら忘れるような衝撃を受けている。 「ななな、なんで。どうしてっ。だってだって、帰って来るのは明日のお昼でしたよね」 「予定より早く終わらせて、夜行で帰って来たんだ。ハルくんを迎えに来たんだけど、出かけているにはおかしな時間だし、電話もメールもつながらない。最初から全力で怪しまれたうえ、連絡もなしに突然来るもんだから資料も隠しきれなくて……」 梶さんの声は吹けば消えてしまいそうなほど儚げになっている。修羅場を潜り抜けたあとの脱力がそうさせているようだ。もしくは達観の向こう側に行ってしまったか……。 一方でハルもどこか一点をじっと見つめたまま無言になっている。 「おい、大丈夫か」 のぞき込むがしばらくのあいだ反応はなかった。 しばらくしてようやく声が届いたのか、のろのろとした動きで俺を見上げてきた。 「……ぼく、保護者と留守番中の約束っていうのがあって」     
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