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「ちょっと。ちょちょちょ、待って。それがよくない話?」
目を回しそうなほどにハルが狼狽し始めた。
「じゃあ、もっとよくない話って!」
顔色が変わり、汗で前髪がはりついている。ストールをしきりにいじくっている。
「あのね」
「まってまって! まだ言わないで! 心の準備っ!」
「先輩がものすごい勢いで飛び出して言った。そっちに向かっている」
「うへぇ……まだ言わないでって言ったのにぃ……」
足元を火花が散った。床を銃弾が跳ねていく。
俺はハルを肩に担いで登り階段に近い棚の影に飛び込んだ。通路を挟んだ左右に棚があり、壁際には積み上げられた段ボールや布を駆けられた機器、錆のういた机など乱雑に置かれているせいで物陰が多い状況は変わらなかった。周囲に視線を走らせる。
「少しでも時間を稼ごうとしたけどダメでした。ま、相手は先輩だからね。無理だよね」
梶さんが疲れたような静かな声で言う。
「これはもう回避不可能の確定事項だから、諦めて気持ちを切り替えよう。ぼくもハルくんもはちゃめちゃに怒られます。すみやかに明石くんを奪還して、怒られる。それが本日のスケジュールだ」
なんつースケジュール。
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