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肩に乗っているハルを片手で支えながら、振り返りざま銃口を向ける。棚の影に引っ込んだのが見えた。目標を切り替えて、男が隠れている棚のひとつ手前、その上段を狙う。弾かれたペンキ缶が落下していく。咄嗟に避けた男が通路に躍り出て来る。その隙を逃がさない。下半身と上半身に銃弾を受けた身体が崩れ落ちて行った。
ハルを床に下ろす。
ほかに敵が潜んでいる気配も音も聞こえてこない。これで全員のようだ。
「こうなったら、秒でも早くあっくんを奪還して、怒られに行きます」
俺のジャケットの裾をめくって銃をホルダーにしまいながら、ハルがそう言った。
「保護者は怖いか」
「めちゃくちゃ怖いです」
即答だった。梶さんの言い方的にも満場一致のようだ。
「お前にも怖いものがあるんだな」
「なんですかそれ」
思ったことがそのまま口に出てしまった。
ハルは不服そうに唇を尖らせて俺を見上げて来る。
「ぼくだって怖いものぐらいありますよ」
「例えば?」
「夜中の鏡とか、カーテンの隙間とか、暗い廊下に面した扉の擦り硝子とか」
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