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5
階段を駆け上り、そのままの勢いで扉を押し開けた。
突入してすぐ銃を向けるが、物のない閑散とした屋根裏部屋だった。海を臨める窓のほか、天窓もあり自然の明るさがあった。所々にパイプイスが置かれているだけで、身を隠せる場所はない。
明石は部屋の中央、ブロックで固定されたパイプイスに座らされていた。
両手は後ろでイスの支柱に拘束されている。布のガムテープがしつこいぐらい巻かれていた。足首も同様だ。一切の自由が利かない状態で、明石は頭を前に倒したまま動かない。
「おい、しっかりしろ!」
顔を隠している髪がかすかに揺れた。
「あれ……なんか、聞いたことのある声がする……」
掠れた声だった。もごもごと不明瞭なしゃべり方をしている。
それでも、胸を重たくしていたなにかが瞬時に消えて行く。
ぎこちない動きで明石が頭をあげた。顔が腫れていて、右目は半分も開いていない。口元が毒々しい赤紫色に鬱血していた。聞き取りにくいしゃべり方はその所為だ。
「きみ、なんか、ぼくの相棒にそっくり……」
「本人だ! もう大丈夫だ、帰るぞ」
ポケットナイフでガムテープの拘束を切り裂いていく。
ハルは入り口に立ち退路の確保に目を光らせている。
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