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明石は力のない声で、うわごとのように呟いた。
「なんだ、城島かぁ。そっかぁ」
服は埃だらけで手足にも擦り傷があった。どんな扱いをされたのか想像できる。
明石はボロボロの姿で、熱に浮かされているようにふわふわと笑った。口元の傷が痛むらしく、眉根を歪めた。それでも相棒はまた笑い続ける。
「あら。ハルくんにそっくりな子が」
「ハルですよ」
俺が明石を背負うのを手伝いながら、ハルはそっと明石の背をさする。
砂袋のような重さが背中にのしかかる。自分の身体を支える力も残っていないようだ。頭をぐったりと倒したまま、それでもポツポツと口を開こうとする。
「わぁ、誰かにおんぶしてもらうとか何年振りだろ。照れちゃうなぁ」
「いいから黙ってろ」
ハルに先導されて階段を下っていく。
明石はしゃべるだけでもしんどいはずなのに、それを押しても口を開こうとする。ふにゃふにゃと頼りない笑いを浮かべながら、
「ごめんよ」
言葉は後悔から削り出すような響きがあった。
「本当にごめん」
先を歩くハルは数歩ごとに振り返り様子を伺ってくる。棚の間を抜けて、下へ続く階段を目指して進んでいく。
「……あぁ。あぁ! そうだな。本当にその通りだ! バカ野郎!」
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