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「結局、重要なのはアルデンテかのう。アルデンテだのう」
嘘ジジイが口を開いた。
俺は日々の食生活が高じてアルデンテについてはそこそこ知識があったけど、その場にいた友達は聞きなれない言葉に戸惑いを隠せない様子だった。
「なっ、なんだよそれ!」
「アルデ何? ふざけんなよ!」
「呪文!? ヤバめの呪文か!」
みんな必死に強がっていたけど、恐怖に支配されていたことが嘘ジジイには筒抜けだった。
「アルデンテにはのう。失った何かを取り戻す、という意味が込められておるんじゃ」
『失った何かを取り戻す』
嘘ジジイがまた、わけのわからないことをサラリと言い放った。
「うわあああ! 逃げろーーーー!」
満足気にニヤリと微笑む嘘ジジイが恐ろしい魔法使いに見えた俺たちは、一目散にその場を離れた。
蜘蛛の子散らすように、散り散りに各家に帰った。猛ダッシュで。
逃げ帰る直前、俺は嘘ジジイと目が合った。
引きずり込まれそうな眼力。
目の奥に隠された異質な何かを勝手に想像し怖くなった。
その夜、悪夢にうなされ、寝小便をした。
懐かしいあの頃、俺たちのスタンドバイミー……
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