風邪から始まる嵐の予感

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「教師の手伝いとはいえ皆のお手本となる立場の人間が無断外泊が許されると思っているんですか?一年生も入寮したばかりだというのに示しがつかなくなってしまいます。ただでさえ最近は学園内だけでなく寮内の秩序も乱れぎみだというのに、副会長ともあろう君がそれでは今後が不安で仕方ありません。寮に帰れば生徒会は関係ないとお考えかもしれませんがそんな事はないです。卒業するまでは生徒たちは貴方たち生徒会をお手本とし行動しますので、いつ何時でも気の緩みのないよう気をつけてください………寺崎くん聞いていますか?」 「はい、返すお言葉もございません。本当に申し訳ございませんでした」 な、ながい。 八代先生の部屋から帰ってきてから小一時間。寮長室に立ち寄り謝罪をすると始まったお説教の嵐に俺は体を縮ませていた。 「おっと、もうこんな時間でしたか。今日の所はもういいので部屋に戻って登校の支度をしなさい」 そう言うと寮長こと土井(どい)さんは席を立った。 寮内の設備管理などを任されている土井さんは教師ではないが、寮では絶対的な存在である。逆らう者は問答無用で寮から追い出すとか噂が飛び交っているが、俺が知る限り未だ見たことはない。 「今日は本当にすみませんでした」 一礼して部屋を出ようとすると「寺崎君」と土井さんに名前を呼ばれた。 「色々言ったけど君もまだ学生なんですからあまり無理をせず体調管理もしっかりしなさいね」 優しく微笑む土井さんにもう一度深々と頭を下げ、俺は今度こそ部屋を後にした。 八代先生より土井さんの方が教師っぽいな、とまだ痛む頭で考えつつエレベーターのボタンをおす。 寮内にエレベーターがあるのも金持ちならではの発想だろう。 まあこれだけの人数を集約しているのだ。最上階まで階段は男子高校生の体力でも毎日はきつい。 チン、と機械音とともに開かれた目の前の箱に足を進めようとすれば見慣れた顔が現れた。
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