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「この度はご入学おめでとうございます。これからここ、政央学園で共に勉学に励むものとして僭越ながら一言」
「馬鹿げた理想は早々にお捨てください。中等部から進学したものはご存知のとおり、ここは日本が誇る政央学園。私たちは生徒である以前に数年後の経済を担うものです」
「問題を起こせば学園へ迷惑がかかるだけではすみません。自身のおかれた立場を理解し、どれだけの影響力があるかよく考え日々生活をおくってください。ここで通用しない事は当たり前に社会でも通用しない事、しっかりと自分たちで考えて行動するよう」
「先輩からのおねがいです」
キレイに弧のえがかれた口元とは裏腹に目元は一切笑ってはいない。
数年の付き合いになる俺ですらゾッとするのだ。初めて目の当たりにした今年の一年生たちはさぞ恐怖しただろう。
「よーちゃん、相変わらず真面目さんだねー」
密かに一年生に同情していれば、ふいに隣下から声をかけられた。ちらりと下に視線を向ければくりくりの瞳がこちらを見上げている。
肩の高さにあるフワフワの髪の毛を撫でながら「そうだな」と返事を落とせば、大きい目が細められもっとと言わんばかりに頭を押し付けてきた。
「つづきまして、生徒会長、安江宏太よりご挨拶です」
あ、呼ばれた!ぴょこんとひとはねし俺の手の下から抜けていった生徒会長、安江はうさぎのように跳ねながら教壇の上へと歩いていく。
耳としっぽが見えたのはきっと俺だけではないだろう。
「おつかれ」
安江と入れ替わるように袖裏に戻ってきた男、寺崎陽介に労いの言葉をかければ、先程とは違いふわりと笑った。
「さんきゅ」
ああ、今年もきっと厳しくも優しいこの男に惚れる生徒が続出するのだろう。
未来のライバルに俺は小さくため息を吐いた。
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