風邪から始まる嵐の予感

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side 安江 急いでよーちゃんの部屋にむかいインターホンを鳴らすが、なかなかよーちゃんが出てこない。 本当に倒れてしまったのかと焦りが募り、インターホンを連打する。 「うるさい!」 少しして中からよーちゃんが鬼の形相で現れた。 髪が濡れているのでどうやらシャワーを浴びてたみたいだ。良かったー倒れてなくて。 にしても、色っぽい。 首筋に伝う雫に思わず僕の喉がなった。 「安江、なんの用だ?」 不機嫌を隠しもせずよーちゃんは僕に問いかける。あ、そうだった、よーちゃんの色気につい当初の目的を忘れかけてしまった。 「よーちゃん大丈夫?」 「……なにが?」 「体調!」 「……なんで?」 「土井ちんが顔色悪かったって言ってたし、さっき会った時も様子へんだったし」 だから心配で、と続ければよーちゃんは小さくため息を吐き「とりあえず中入れ」と僕を部屋に招きいれてくれた。 あ、何気によーちゃんの部屋入るの初めてだ。 思わずキョロキョロと挙動不審によーちゃんの部屋を観察してしまう。 まあ寮だから部屋の作りは僕の部屋と一緒だが、やっぱり真面目なよーちゃんの部屋なだけあって整理整頓が行き届いている。 「心配してくれてありがとな」 「よーちゃん風邪?」 「いや、実は、………」 言いずらそうにどもるよーちゃんに首を傾げる。 もしかして入院するほど大きな病気なのかも。そう考えつくと顔から一気に血の気が引いた。 それはよーちゃんにも分かったらしく、慌てて言葉を続けた。 「病気とかじゃないから………二日酔いで頭いたいんだよ」 「………え?」 「昨日誤って少しだけ飲んじゃって……頼むから誰にも言わないでくれよ」 ばつの悪そうな顔をしてそっぽをむくよーちゃんの意外な事実に僕はきょとんと目を丸くした。 まさかの二日酔い。すっごく心配したのに二日酔い。 ほっとしたのと同時に僕は笑いがこみあげてきた。
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