風邪から始まる嵐の予感

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昼食にはしじみ汁を食べようと思っていたのだが、思った以上に食欲が出ず、俺は昼食抜きで仕事をこなしていた。 今日はそこまで仕事が溜まってはいないものの頭が働かないせいか俺だけ普段の仕事ペースを大幅に下回っている。 「陽介手伝うか?」 「いや、平気」 「そうか。俺は手が空いたから必要なら声かけろよ」 既に自分の仕事を片付けた上岡が親切な申し出をしてくれるが、二日酔いで仕事が進んでいない分助けてもらう訳にもいかない。まあ上岡の前では土井さん並みの説教を食らいそうなので言わないが。 提出用のプリントを作成しつつ上岡の幻滅した顔を想像する。 「せ、先輩。昼食食べないとお体に悪いですよ」 「並木もありがとな」 「い、いえ!サポートが俺の仕事なんで」 「けど、仕事が少ない時くらいクラスの友人と飯行ってこいよ?」 勝手に想像していた上岡の幻滅顔に滅入っていれば並木が不安そうに眉を下げパソコンに影を作った。 返事の代わりにコクコクと首がもげそうな程頷く並木に和み、少しだけ痛みが緩和された気がする。 今日は國仲と磐田はクラスの友人と昼食を取ると申告があったのだが、並木は1日も欠かさず昼間に顔を出すため先輩としては心配にもなる。 まさかいじめられてるのでは、と考えすぎた事もあった。だがそれもいらぬ心配で磐田に聞けば並木は先輩たちと少しでも長くいたいだけだと可愛らしい回答が返ってきた。 あー本当に愛しいやつらだ。 未だ俺の横でおろおろとする並木に座ったまま顔を見上げる。目が合えば耳まで赤くなる並木の腰にお構い無しに抱きついた。 え、え?と上から戸惑う声が降ってくるが、今の俺には並木がしじみ汁と同じ効果を発揮している。 癒される、すごく癒される。
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