風邪から始まる嵐の予感

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お言葉に甘えて生徒会室の奥に設置されたソファに横になる。皺にならぬようジャケットを脱ぎ背もたれにかけると、上岡が衣紋掛けへと移動させてくれた。 江西もパンを咥えたままブランケットを持ってきてくれる。 ただの二日酔いだというのに皆が優しい。 その優しさが段々と申し訳なくなるが、今は早く頭痛を治して放課後の仕事に備える事が皆の行為に答えることだと思い瞼を閉じた。 そこから数分も経たずに眠気が訪れ瞼が重くなる。逆らう事はせず、俺は微睡みに落ちた。 ーーーーーーーーーー side 上岡 ソファから規則正しい寝息が聞こえホッとする。 最近は高良田の奇行のせいで生徒会にも無駄な仕事が増えていた。その上、高良田は事あるごとに陽介に絡む傾向があり、本人は口にはしないがストレスの原因となっていたであろう。 今日様子がおかしいのも疲れが溜まっていたのだと生徒会室にいる皆がそれぞれ判断した。 「そしたら俺たち仕事あがったから飯行ってくるわ」 「並木も連れてくから陽介起こすの任せるな」 近藤と北野が机の上をまとめ立ち上がり、並木の腕を両側からがっしりと掴む。囚われの宇宙人のようになるかと思えば身長差からどちらかと言うと腕にまとわりつくハーレムのようだ。 当の本人は何も聞かされていなかったのか慌てふためいている。 「えっ…そ、そんな!先輩たちとご一緒なんて滅相もありません!俺は後で購買行きますんで」 「しっ!陽介寝てるから声あらげるな」 「あ、ごめんなさい」 「俺たちが並木と飯食いたいんだよ。それとも俺たちとは食堂歩きたくないのか?」 「そんな事ないです……ほんとにご一緒しても?」 「たまにはいいだろ。じゃあ行ってくるから後よろしくなー」 後輩思いな二人に感心しつつ見送れば、室内はしんと静まりかえった。 國仲と磐田は友人と昼食をとるとおらず、安江は新歓時のお願いを消化しに出ている。その為現在ここに残っているのは寝ている陽介と、俺と江西。 気まずい訳ではないが、お互いがライバルと意識してから二人で話す機会などなかったので微妙な空気が流れた。
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