風邪から始まる嵐の予感

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side 五十嵐 用事という用事があった訳ではない。 ただ“アレ”以来、寺崎と会話する機会が極端に減ったのが気掛かりで足が自然と去年までは毎日通っていた生徒会室へと向かっていた。 素直な疑問を投げる後輩二人に何と答えたものかと視線を泳がせれれば、普段うるさいくらいの生徒会室には他に人陰がなかった。 「今日はお前らだけか?」 「さっきまで近藤たち居たんすけど飯いっちゃいました」 「あとは陽介がそこで寝てます」 「寺崎が寝てる?」 人前ではそれなりに真面目を取り繕っている寺崎がこんな所で寝ているという事実に些か愕然とする。 生徒会室に仮眠ベッドは設置されていないので、寝れるとすればソファくらいだろう。 俺は入り口付近から奥に足を進めソファを覗きこんだ。 そこには小さくはない身体を丸め猫のように寝る寺崎の姿があった。 「寺崎、体調でも悪いのか?」 俺の気配にも気付かず寝息をたてる寺崎の額に手を当てると、上岡が事の次第を説明してくれた。 「体調が悪いというよりは疲れかと思います。まだ慣れない副会長の仕事と合わせて厄介事が多かったので。今日は放課後の仕事は俺たちで振り分けるので午後の授業が終わり次第寮に帰します」 上岡が話す間も寺崎の額に手を当てていたが、睡眠中の体温上昇を差し引いても熱い。 首筋に手を滑らせればやはり熱をおびていた。 「江西わるいが体温計取ってくれ」
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