風邪から始まる嵐の予感

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side 五十嵐 「陽介、熱あるんすか?」 救急箱から体温計を探しつつ江西が食いぎみに聞いてくる。 上岡も心配になったのだろう、俺とは反対側の端で顔を歪めていた。 「分からん、多少熱いが流石に手のひらでは温度は計れん」 「あったあった」 「ありがとう江西」 広くもない生徒会室を小走りで近づいてくる江西といい、側で耳と尻尾を垂らす上岡といい、寺崎はだいぶ大きな大型犬を飼い慣らしているらしい。 場違いに俺はくすりと笑ってしまった。 それを不思議に思った二人がじっと見てくるものだから、「何でもない」と誤魔化し寝ている寺崎へと声をかけた。 「ん………え?五十嵐先輩、何で?」 寝起きにしてはハッキリとした物言いなのは居るはずのない俺に驚いたからだろう。 驚きで子供のように目を丸くする寺崎を起き上がらせソファへと座らせる。 事の次第が理解できない寺崎はされるがまま俺の動作を凝視していた。 「おはよう、寝起き早々で悪いが熱を計れ」 「……あー、熱ないと思います」 「いいから計れ」 何故かバツの悪そうに目線を泳がせる寺崎。 理由を聞くのも面倒なので有無を言わせぬ声で寺崎に体温計を押し付けた。 渋々と言った感じに体温計を受け取った寺崎は三人が見守る中で脇にそれを挟み込んだ。
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