風邪から始まる嵐の予感

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side 陽介 肩を揺すられ起こされた先には意外な人の姿があり、俺は夢との狭間を散歩する暇もなく現実へと引き戻された。 渡された体温計を受け取りはするが二日酔いなのだから熱などはないだろう。俺は五十嵐先輩にどう言い訳をしたものかと悩みつつ脇へ体温計を挟む。 寝る前より頭痛がひどくなった気がするが、二日酔いの症状を深く知りもしないのでそういうものなのだと思った。 ピピピピッ 電子音がソファの回りに響き脇から体温計を外す。まず自身で確認しようと顔を伏せればひょいと上から体温計を拐われた。 それを追うように目線を上げれば数字を睨み付け眉を寄せる五十嵐先輩の姿。横から江西も覗きこみ、ため息を漏らした。 「そんな高温でしたか?」 そんな二人の様子から熱があったのだと理解した俺は先ほどとは違う意味でバツが悪くなる。 「38.1℃……まだ上がり始めだろうから夜にかけてもっと上がるだろうな」 「陽介、自己管理なってなさすぎ」 「俺たちも気づけなかったが、これだけの高熱なぜ自分で気づかないんだ」 五十嵐先輩も江西も上岡も、口調こそキツいが心配をしてくれているのが感じとれた。 申し訳なさから居たたまれなくなり「ごめんなさい」と唸りに近い声で呟く。それに対し三人は再び長いため息を吐き出した。
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