風邪から始まる嵐の予感

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教室のロッカーから荷物を取り職員室で担任へと報告をする。 その後生徒会室に戻れば、上岡と江西は既に居らず五十嵐先輩だけが先まで寝ていたソファに腰かけていた。 「お待たせしました」 俺が声をかければ五十嵐先輩は読んでいた本から顔をあげ切れ長の目でこちらを斜視する。 何か言いたげな視線に「どうされましたか?」と伺えば眉間の縦筋を増やした。 「病人にこんな話をするのも何だがあまりにもお前の態度が普通で拍子抜けしただけだ。仮にも体を重ねた相手を前にしてその態度ではいくら俺でも不快に感じる」 息継ぎなしに言う五十嵐先輩の苛立ちがひしひしと伝わり、俺はこの人にこんな感情を抱かせてしまった事に焦心(しょうしん)する。 同時に約1ヶ月ほど前の出来事が鮮明に思い出された。あの時も五十嵐先輩は俺の言葉に眉を寄せていたな。 ーーーーーー 3月半ば 3月はイベント事も多く引き継ぎなどもあるため皆毎日遅くまで生徒会室に入り浸っていた。 その日も時計の針は21時を回っており、誰ともなくため息を漏らす。 「今日の残りは俺たちで確認する、遅くまでありがとうな。1年はもう帰れ」 自分が一番仕事を抱えていると言うのに、五十嵐先輩はいつでもこうだ。だからこそ俺たちはこの人に着いていきたいと思うのだが、最近の仕事量は些か心配になる。
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