風邪から始まる嵐の予感

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キスは嫌いではない。 前に付き合っていた彼女とも人目を気にしながらもよく唇を合わせた。変態チックに聞こえるかもしれないが、テラテラと彼女の唇を着飾るグロスを舐めてそこを裸にするのは興奮した。 五十嵐先輩の唇には勿論グロスなどついてはいない。ましてや女性のふっくら柔らかい唇とは違い、薄い唇は今まで経験したキスのどれとも似つかない。 それでも俺は今まで以上に興奮を覚えていた。 くちゅり 男同士という背徳感もあるのかもしれない。 口内に侵入してきた舌を迎え入れればゾクリと舌先に痺れが走る。 女性とは違う分厚い舌が無遠慮に中を荒々しく犯すものだから、余計に女性との違いを、彼女との違いを脳裏に焼き付け興奮が増した。 「…ン、ソファとベッドどっちがいい?」 いつの間にかソファに組しかれていた。 いままでならば俺が主導権を握っていたが五十嵐先輩にそれは無理なようだ。どっちにしろ主導権を渡されてもうまくできる自信は全くないけど。 俺に問いかけながらも五十嵐先輩の手はどんどんと先の行為へと進めていく。 器用にシャツのボタンを片手で開けつつ足の間に膝を入れてくる。軽いキスを何度も落とし視線だけはずっと俺を捕らえていた。 もうこのままここで、そう口にしそうになるが170超えの男が二人でソファに寝転がるには些か狭い。 五十嵐先輩のキスを名残惜しく思いつつ、俺は口を開いた。 「ベッドでお願いします」
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