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side 五十嵐
「ンン、……はァッ、せんぱ…」
主導権を譲れとねだる寺崎が可笑しく様子を見がてら好きにさせてみる。
だが、思っていた以上に俺自身に余裕がなく、寺崎から主導権は早々に返還してもらった。
目尻に溜めた涙と息苦しさで赤く染まった頬は普段見せる真面目な後輩と同一人物だとは思えない。
それほどにいまの寺崎は妖艶である。
「ちょ、息させてくだ、ンぅッ」
きっとこれまでのセックスでは自分がリードしていたのだろう。一方的に責められるキスに慣れていない寺崎は息継ぎもままならず俺の掌を弱々しく押し返す。
そんな力の入っていない抵抗など相手を煽るだけだ、そう意味を込め俺は再び獣が獲物を捕らえるように寺崎の唇を食らった。
「はぁ、はぁ……」
飲み込みきれずにどちらのものか分からない唾液が寺崎の口から溢れだした頃、俺はやっと唇を離す。
寺崎を見やればまだキスしかしていないというのに出来上がった表情でぼんやりと見上げていた。
「…先輩、エロすぎます」
こういう場面で使うエロいは男にとって最上級の誉め言葉だ。
寺崎の渾身の嫌味を有り難く受け取り、絡めた指をゆっくりと腕から肩、肩から鎖骨へと滑らせる。俺の行動にピクリと反応するも力が入らないのか抵抗はみせない。
ボタンの外れたシャツを左右に追いやり晒された白い肌に俺は待ての出来ない駄犬さながら吸い付いた。
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