日常と化した異常

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三日前 「今回は特別枠の生徒によるブロマイドかあ」 「テーマは半裸で手錠か、エッロいのぶっこんでくんね」 配られた書類に目を通し、俺は眉間に皺を寄せた。 嬉々としてどんなポーズにするか話す安江と江西(えにし)のように開き直れればいいのだが、やはりこういった写真撮影は慣れない。 待遇を受け取ってる限り拒否権などもなく、職務として全うする義務がある。わかってる、頭ではそう分かっているのだが、どうしても慣れないのだ。 「陽介!表情かたすぎだから」 手錠でベッドに拘束された俺はカメラの前だというのに顔をひきつらせていた。 カメラを握るのは江西。公平を期すために一般生徒が撮影に加わることはない。勿論外部に頼むことは学園の恥を晒すことになるため、撮影は基本それぞれ撮りあう事に決まっている。 「んで俺だけベッドなんだよ」 「だってよーちゃん自分で設定決めないんだもーん!僕は体育倉庫で強姦風、かずっちはエロい囚人風、すぐるは囚われの野獣風ってみーんな設定決めたのにさあ」 「だから別に普通に半裸で手錠つけた写真でいいだろ」 「いいわけないじゃん!よーちゃんこれお仕事だからね。やるからには真面目にやらなきゃダメなんだよ」 普段真面目のまの字もない男に言われたくない。 だが、いってる事は正しい。 「わかった、俺が悪かった。でも表情とか言われてもモデルじゃあるまいしそんな簡単に作れん」 素直に謝るが、表情が作れないのはどうしようもない。むしろこいつらがあそこまで世界観を作りあげて撮影できることが本当に凄いと思う。 無理な体制のまま少し痛む腕を捩るとカシャリと手錠がなった。その音に安江の視線が腕へと移り、そこからゆっくりと視線を顔へと戻す。 ゾクリ 今一度視線があった時、安江の悪巧みを仕掛ける表情に鳥肌をたてた。 
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