日常と化した異常

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side 陽介 生徒会で行う仕事は主に学園行事の運営。 一年を通し一般の学校より多くある行事を滞りなく運営するのが俺たちの責務である。 生徒会長は選挙形式で決めるが、他の役職に関しては生徒会長の一存で決められ、受験の関係もあり二年生が進級すると同時に後輩へと引き継がれる。今年も例外なく前任者から引き継がれた。 「もー覚えること多すぎだよお」 今年の生徒会長様である安江は窓際に陣取った自身の席で嘆いていた。 前任者により綺麗にファイリングされたマニュアルを開き、文句混じりにも懸命に文字をおう姿は普段のおちゃらけからは想像できない。 例えば先日行った新入式。 当日の進行リストからはじまり、各担当への手配、機材の使用許可、当日関わる生徒の授業免除の申請、ご来賓の方々への挨拶まわりなどなど、一つの行事だけでも行うことは山ほどあるのだ。 その担当の振り分けを行うのは生徒会長である。なので仕事を全て頭に入れて置かなければ運営などこなせない。 「少し頭休めろよ」 上岡はコトリとファイルの横にマグカップを置きフワフワの髪を撫でた。 上岡の人の頭を撫でるのは癖なのだろう。気づけばいつも誰かの頭を撫でている気がする。 「陽介も、礼状ならパソコンで出力したほうが早いぞ」 俺の席にもカップを届けてくれた上岡に礼を言えば手元の便箋を奪われた。 先日参加して下さったご来賓の方々への御礼状を手書きで作成しているのだが、効率を考えればパソコンからの出力が何倍も速い。 だがお忙しい中足を運んでくださった方に対して事務的なものでは送る意味がないと俺は思う。 今後の付き合いも考えれば手書きで送るというのはビジネスの面でも間違いではないぞ、と上岡に説明すれば「安江の仕事の振り分けは正解だな」と口角をあげた。
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