日常と化した異常

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「っていないし」 正直顔など合わせたくもないのだか、頼んだ手前自身で取りにいかないのは人として失礼である。 書類のみ預りとっとと退散してしまおうと来たものの、八代先生の席はもぬけの殻だった。 (とりに来いって言ったの自分だろうが) 内心舌打ちをし、俺は近くを通りかかった初老の教師に八代先生の居場所を尋ねた。 「この時間にここに居ないなら保健室だろう」 八代くんには困ったものだ、白髪混じりの髪を掻きながら苦笑を浮かべる教師に苦労しているのだと同情さえしてしまう。 上司や先輩に中る方にここまでの気苦労をさせているとは、八代先生の社会人の自覚はどこに置き去りにされたのか。 ーーガチャッ 「失礼します」 ドアを開けると薬品の独特の匂いが鼻についた。 滅多来る所でもないが病院を連想させる匂いはやはり居心地がいい場所ではないな。 俺はキョロキョロとさほど広くもない室内を見回しここの主を探すが見当たらない。 「いた」 代わりに白いカーテンを覗けば探し人である八代先生が気持ちよさそうに寝息をたてていた。 眉間が緩み眉の下がった寝顔は年より幼く普段の傲慢な態度からは想像もつかない。 「クマ、できてる」 昨日は気付かなかったが八代先生の目の下にはくっきりとしたクマがあった。 おちゃらけて見せてはいるが本当は主任としての責務に追われているのだろう。 綺麗な顔には似合わぬそれに手を伸ばしてみるが、八代先生が起きることはなかった。
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