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「いえ、結構です」
裏がありそうで怖いとかそんな理由ではなく、単純に八代先生に手伝ってもらうのは申し訳がない。
薄れたとはいえクマはまだある。人の手伝いをかって出るくらいならば休息をとるべきだ。
疲労の結果倒れでもしたら、他の先生方の気苦労が増し余計にあの白髪が目立つようになってしまうぞ。
笑えない未来を想像していると八代先生が席を立つ音がした。
「真面目なのもいいが人に甘える事も覚えろよ」
八代先生は煙草の煙を吐くと俺の髪をくしゃりと撫でた。細められた目と大きな手から伝わる体温が心地いい。
こういう所、ずるいなーと思う。
背伸びしてみてもこの人の前では自分は子供なのだ。
「アンタにはずっと甘えっぱなしだ」
撫でる腕の向こう側にある顔に真っ直ぐと向き直り、今おもっている事を伝える。目上の方と話す時には絶対に忘れない敬語も自然と取れていた。
「………んっ」
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