友情に勝る欲情

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『では皆様、今宵は盛大にお楽しみください』 放送部のアナウンスと共に会場からグラスを合わせる音が響いた。 今年の新歓は和をモチーフに会場を彩っている。和紙や竹で作られた灯籠を灯れば、一面に光と影が作り出す風流な空間が生まれた。 その幻想的な会場に皆満足しているようで企画側としても喜ばしい。 また、講堂内はいくつかブースわけされそれぞれのコーナー毎に二三年生が待機している。そこに一年生が遊び方を教わりに行く事で先輩後輩の親睦が深まるだろう。 初めてみる遊びに一年生たちも夢中になっていた。 今日の為に懸命に伝承遊びを覚えて下さった先輩方や同級生に本当に感謝だ。 「寺崎先輩!飲み物もってきましたー!!」 袖裏から講堂内を覗いていれば、後ろから元気のいい声に呼ばれた。 振り返ればブンブンとしっぽを振る磐田がグラスと皿に取り分けた料理を持って立っていた。 「良くできました」 後輩のわんこっぷりが可愛らしくついつい頭に手を置き誉めてしまう。 いや、ここはありがとうとお礼をいう所だろ。 俺は思わずしてしまった自身の行動に苦笑を浮かべた。
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