友情に勝る欲情

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「ルールは簡単!ステージにいる僕たちが逃げるから他の生徒みんなで僕らを捕まえてねー」 「捕まった子は捕まえた子のお願い事を一つきいてあげるのっ」 「時間は……うーん僕らの逃げる体力的に15分ってところかなあ」 勝手に考えた即席ルールを説明する安江。 生徒会長だからとこんな横暴が許されるはずもなく、俺はステージ中央で振り袖を揺らしながら話す安江の背後に近づいた。 「いい加減にしろ」 後ろから安江を低い声で咎めた。 驚いた安江は大きな目をより大きく丸め振り返る。 「失礼いたしました。生徒会長も冗談をおっしゃるほどこの一時が楽しく、少しでも長く皆さんと過ごしたかったのでしょう」 マイクを取り上げ、俺は優しい語り口で会場内の生徒に向き直った。 言葉使いこそ丁寧だが、そこには有無を言わせぬ響きを含めた。だが既に安江の提案を聞いてしまった生徒たちの期待と興奮が、歓声となり会場内をおしつつむ。 こうなってしまっては開催以外に収集がつかないだろう。 「……分かりました。ただし何点かルールを足させていただきます」 俺は喉まででかかった次の言葉を胸の奥に収め、代わりに了承の言葉を口にした。 しかしこのままのルールでは怪我人や器物破損などが起こりかねない。その為いくつかのルールを付け加えた。 「ひとつ、新歓の会場である講堂内では走らないこと」 「ふたつ、学園内のものを壊さないこと」 「みっつ、怪我などに繋がる危ない行動はしないこと」 「よっつ、如何なる場面でも教師並びにその権限を持つものの言うことは聞くこと」 「これらを破った者は生徒会の権限により処罰の対象とさせていただきます」 マイクを握りなおし「守れますか?」と問いかければ、眉一つ動かさず笑う俺に背筋を凍らせた生徒たちが首を痛めそうな程にぶんぶんと頷いた。
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