友情に勝る欲情

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俺はいま許可を出してしまった数分前の自分を恨んでいる。 校内の広さからして捕まる事はそうないだろうとたかを括っていたのだが、全校生徒vs10名では分が悪すぎた。 唯一救いなのは廊下の広さから追いかける側は団子状態になってしまい思うように前に進めないでいることだ。 「ちくしょ、動きずらいなっ」 だが俺も着物という走るには全く適していない格好のせいで後ろとの距離を開くことが出来ずにいた。 いっそ誰かに捕まってしまう方が楽だとも思うが、あの団子集団に飛び込む勇気はない。 ちらりと後ろを振り替えれば血走った目をした生徒たちが我先にと首を伸ばし前のめりに追いかけてくる。 (……まじでこえーよ) 着物の合わせがはだけようとも、心臓が破裂しそうに脈打っても、肺が悲鳴をあげようとしてもとにかく走る。 途中で放送部のアナウンスが捕まった生徒の名前を読み上げていた。しかし、それすら既に耳に入ってこない。 息継ぎさえ辛く春先だというのに汗が滴る。 それでも後方から迫る恐怖に俺は足を前にすすめた。 まるで脱獄犯か何かにでもなった気分だ。 「陽介、こっち」 廊下の突き当たりをスピードも落とさず曲がれば聞き覚えのある声に呼び止められた。
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