友情に勝る欲情

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「うわっ」 強い力で手を引かれバランスを崩し、声の主である上岡の胸へとダイブした。 上岡はそんな俺を軽く受け止めると追っ手に気付かれぬよう素早く扉と鍵をしめた。少し遅れて無数の足音が響く。 「…………行ったな」 段々と遠退く足音にどっと疲れが込み上げ、糸の切れた操り人形のようにくたくたと地面にしゃがみこんでしまった。 そのままの体制で未だに乱れた呼吸を整えるために、一度深く息を吸い込む。 「最近助けられっぱなしだな」 真上にある上岡の顔を見上げ目尻に皺を寄せ力なく笑えば、いつものようにゴツゴツとした大きな掌が降ってきた。 ぐしゃぐしゃと少し乱暴に髪を乱されるが上岡の手だと思うとそれすら心地がいい。 「相変わらず抜けてるな、直ぐに隠れちまえば良かったのに」 「隠れようと思った時にはもう追いかけられてたんだよ」 上岡から伝わる体温がひどくほっとする。 されるがまま撫でられていると、ふいに上岡の手が首筋を撫でた。 「すごい汗だな」 指の腹で汗を拭う仕草がいやにセクシーで、近すぎて忘れていたがコイツも生徒たちに選ばれたイケメンの一人だったと思い出す。 意識するとその行動が恥ずかしくなり上岡の顔がまともにみれずあからさまに顔を背けた。 俺の行動に一瞬ピタリと手が止まったが、次の瞬間には何事も無かったように乱れた着物の襟に両手をかけた。
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