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Side 直仁
6年前
あの人はよく笑う華のような人だった。
大学卒業後から無理を言い独り暮らしを始めた。だが高良田グループの御曹司として育った世間知らずにとって自立は簡単なものではない。
中高と寮生活を送っていたものの、気付けば周りが全てしてくれていた為生活能力は一ミリも身に付かなかった。
「申し訳ございませんでした」
将来は親の事業を継ぐ事になる。
だがその前に一般の学校で行われている教育を学ぶべく県立高校へと就職した。
親の援助も受けず生活するには初任給は安く、独り暮らしに選んだアパートは風が吹けば寒さに凍えるようなボロアパート。
もちろん壁も床も薄い。
いや、それが原因とは到底この状況では言えないだろう。
「子供が家の中で傘広げて歌い出すからビックリしたわー」
「本当に申し訳ございません」
引っ越してから数日、お風呂の湯を溜めている事を忘れ出勤してしまった俺の部屋は水浸しになった。
被害は自分の部屋のみで収まらず、真下の部屋にまで及ぶ。
謝罪に伺うと迷惑を蒙ったにも関わらず家主の恵子さんは大口で笑った。
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