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「会長なら見える位置につけんだろ、つかこんな所脱がなきゃつかねーよ」
鏡越しに鎖骨下の薄くなりかけた赤い跡を確認すれば、再び振り返った江西が無遠慮に触れてきた。
「で、誰のキスマーク?」
どこか苛立ちの籠った声に誤魔化すのも面倒になり正直に話す。
「たぶん上岡の」
「新歓のときか」
確信をもった江西の表情に驚く。
新歓のことは誰にも言っていないし、上岡の性格から誰かに言いふらすこともないだろう。
「新歓の後、何かありましたって二人とも顔に書いてあったし」
擦っても赤い跡が消えるわけではないのに、江西は親指の腹で擦り続ける。
そこから伝わる江西の感情があの時の上岡に似ていた。二人の感情が分からない程鈍感でもなく、俺は目を泳がせた。
「上岡と付き合い始めたのか?」
「いや、」
「……なら俺と付き合えよ」
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