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聞きたくない台詞が耳に入る。
「俺と付き合って」
反応のない俺に先の言葉を繰り返す江西。
うるさい、黙れ。
江西も、上岡も、俺がYESと言わないことを分かってるんだ。それでも溢れでた思いをぶつけてくるのは、二人の自己満足でしかない。
俺は友人の想いに困惑しかできない。
「陽介、こっち向けよ」
視線を外したままの俺の頬に添えてきた手が震えており、余計に心苦しくなる。
いつもの態度で言ってきたなら俺も笑って流せたのに。
「……すぐに返事しなくていいから、拒否だけはすんな」
向き合わされた江西はひどく臆病そうな青い顔つきで、俺は邪険に払うこともできず唇を噛んだ。
それが答えだと解釈しぽすんと俺の肩に顔を埋める。普段からは想像もつかない姿に今一度江西の真剣さを感じた。
「うわ!すっげー広い!!」
二人の気まずさを裁ち切ったのは散々さっき聞いた大声だった。
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