天使の名の悪魔

16/25
前へ
/136ページ
次へ
身振り手振りで俺に説明をする高良田の話をまとめると、こうだ。 前にいた学園にもあの変装で編入したらしい。 だが直ぐに数人の生徒にはバレてしまい(むしろ何故数人しかばれなかった)バレた生徒とは友人関係になった。 また転校が決まった時にその友人たちから「天使は可愛いから危ない。政央ではこれを絶対に外すなよ」と釘をさされ、転校してきたのだと。 その友人たちから随分と溺愛されていたことで。 「でも陽介ならいいよな!友達だもんな!!」 何度も言うが交遊関係を築く気はない。 まあ芸堂の友人たちが心配する展開にもならないので、高良田の見た目がどんなでも興味もないが。 それは横にいる江西も同様らしく、見た目が可愛いからといって嫌悪感が消えることはなかった。 「陽介、体冷えちまったから湯船入るぞ」 いつの間にか体を流した江西は俺の腕を掴み浴槽へと歩きだす。 そこで初めて江西の存在に気づいたらしい高良田がまた大声で喚きだした。 「な、ななんでお前がここにいるんだよ!!」 それは間違いなくお前が江西に昼食をぶちまけたからだろ。喉元まで出かかった言葉を後の会話が面倒で飲み込んだ。 耳まで赤く染めた高良田はそれだけ言うと口元を押さえ俯く。 さっきまでマシンガントークを繰り広げていた人物と同一とは思えぬほどに口を閉ざした。借りてきた猫状態だ。 「陽介、さみー」 高良田の行動に足を止めた俺に、江西は湯船に入りたいと催促をする。 どうやら高良田の質問に答えるつもりはないらしい。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1016人が本棚に入れています
本棚に追加