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無視された事がショックだった高良田は、目に涙を溜め江西はの前まで駆けてきた。
一瞬で涙を流せるとは、子役なら即デビューできそうだ、と完全に蚊帳の外になってしまった俺はぼんやり二人を眺めながら思った。
「ひでーよ、俺の気持ちこんなに掻き乱して」
初めて聞く高良田のか細い声。
身長差から自然となる上目遣い。
どこかの恋愛指南書にまるまる書いてありそうなベタな行動に吹き出してしまいそうになる。
だが、男という生き物はこういうベタに弱いのだ。
俺もこれが女の子ならばコロリと騙されてしまうだろう。
「俺のこと拒否すんなよ」
高良田のその台詞にフラッシュバックした。
二人の修羅場にも似た状況を傍観していた立場から、自分も当事者なのだと思い出す。
高良田と江西では選ぶ言葉が一緒でも重みが全然ちがう。分かっているのに、何故か今の高良田が江西と被ってみえた。
江西も俺と同じように感じたのか掴む腕に力が入る。
「お前、さっきの聞いてたのかよ」
困惑か、怒りか、俺の位置からは江西の表情は確認できないが、震える声に胸がざわついた。
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