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Side 江西
「さっきのって何だ?それよりお前泣きそうな顔してる………俺が側にいるから泣いてもいいぞ」
高良田は俺の腰に腕を巻き付かせ抱きついた。
直ぐに剥げばいいのだが、思っていた以上にさっきの出来事のダメージが強く動けない。
それなりに今まで交際はしてきた。セフレと呼べる奴もいた。
陽介に対してもはじめはそれくらいの興味しかなかったが、友人としての付き合いが長くなるにつれて俺の中で陽介のそんざが大きくなっていき、周りに嫉妬するほど育った。
陽介が俺を友人としてしか見ていないのは分かっている。分かっているが、他の奴が手を出すくらいなら俺のものにしてしまいたかった。
結果、後悔しか生まれなかったが。
気持ちが沈んでいき、腕を掴む手が弛み陽介の体温が離れていく。
「そんな苦しそうな顔するくらいなら、全部吐き出しちまえばいいだろ」
頬に触れる高良田の手は女のように細く、子供のように温かい。その体温とは真逆に、俺の頭の中は真空のように冷たく凍りつき判断力が鈍る。
でなければ、高良田の腰に腕を回そうなど思い付くはずもない。
ゆっくりと高良田の腰に向かう俺の手。
しかし、その手はたどり着く前に後ろへと引かれた。
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