天使の名の悪魔

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上岡に対してもそうだが最近の俺はおかしい。 思考と行動がまったく比例しない。 困惑しつつも江西の背中に回した腕を緩め、一歩後ろに下がる。 この時ばかりは身長の低い高良田が羨ましくなった。下がった事で同じ高さの目線が絡んだ。 「すまん、今のは忘れろ」 居たたまれなさから早口になり舌とともに声も喉に引っ掛かる。 江西の瞳に写る自身の姿が必死に何かを誤魔化しており、肩が強張った。 「やだね…」 硬直する俺の表情とは逆に江西は頬を緩めた。 「待ってるつもりだったけどやめた。脈がないって訳でもなさそうならガンガンに攻めさせてもらうわ」 墓穴を掘った自分が憎らしい。 腕を捕まれ再び江西の胸に飛び込む。今度は俺ではなく江西の腕が背中に回された。 そこで忘れていた高良田の存在を思い出し江西の肩越しにそちらを見る。 そこには何を考えているのかさっぱりわからないような無表情な顔つきをした高良田の姿。 しかし俺に気づけば悪魔的といえるかも知れない挑戦的な表情を浮かべ、大浴場を静かにあとにした。 「離れろエロ西」 「離れねーし」 「大体お前、人に告白する前に体の関係ある奴らと別れろよ」 「別れたら陽介すぐに付き合ってくれんの?」 「……離れろ」 高良田が出ていってから俺たちはすっかり冷えきった身体を暖めるため湯船につかった。 その間もべったりと俺から離れようとしない江西に困惑しつつも自身でまいた種だけに強く拒めない。 高良田の存在も気になるし、江西との今後の接し方も考えなければならない。 俺は新学期早々に山積みになった今後の課題から逃避するようにぶくぶくと湯船に沈んだ。
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